『おとなのけんか』


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トニー賞演劇部門の作品賞やローレンス・オリビエ賞の新作コメディ賞を受賞した
ヤスミナ・レザの舞台劇「大人はかく戦えり」を、「戦場のピアニスト」「ゴース
トライター」のロマン・ポランスキー監督が映画化。
子ども同士のケンカを解決するため2組の夫婦が顔をあわせ、話し合いを始める。
最初は理性的に進められていた話し合いも、時間がたつにつれ各々の本性がむきだ
しになり、やがてそれぞれの
夫婦間にも不協和音が生じていく。登場人物は4人のみで、室内でリアルタイムに
進行する会話劇。
ジョディ・フォスターとジョン・C・ライリー、ケイト・ウィンスレットとクリス
トフ・ワルツが2組の夫婦を演じる。

【スタッフ】
監督   ロマン・ポランスキー
製作   サイード・ベン・サイード
共同製作 マーティン・モスコウィック
オリバー・ベルビン
ピョートル・ライシュ
ハウメ・ロウレス
ロマン・ポランスキー
原作   ヤスミナ・レザ
脚本   ヤスミナ・レザ
ロマン・ポランスキー
【キャスト】
ジョディ・フォスター
ケイト・ウィンスレット
クリストフ・ワルツ
ジョン・C・ライリー

映画.comより引用

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【感想】
まず、特筆すべきは”上映時間が短い!”ということだろう。
上映時間が長い映画が多くなってきている昨今では極端に短い”79分”!
タイトでとっても好感が持てる。
次にキャスティング。
2組の夫婦、つまり4人の人物しか主に出てこないのだが、その4人がまさにハマリ役!
映画が始まって最初に”コイツやな奴だな~”って思わせてくれるのが、クリストフ・ワルツ!
『イングロリアス・バスターズ』で、ドイツ将校訳役を演じていたのは記憶に新しい。

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『イングロ~』でもそうだったが、なぁ~んかすっとぼけていて飄々としてそうな面構え。
この面構えからくる彼の印象が、本作のエゲツナイ弁護士役にぴったりなのだ。
映画序盤の印象からクリストフ・ワルツが際立ってしまうが、他の3人も同じような理由からとてつもない適役感が感じられる。
そうゆう演技力に何の問題もない4人を密室に放り込んで、ポランスキーがメガホンをとり、いい脚本があればあと何も心配いらない。少々短い時間ではあるが、極上の映画体験に誘ってくれる。
ストーリーのほうはといえば、タイトルどおり”おとなのけんか”なので、しかも4人のキャラ設定がそれぞれ中流以上の経済力を持つ”おとな”で、理解力のある人間が冷静を装いながら、自分たちのコドモのけんかの話をしていくのだけど、やがて・・・
要は、”その欺瞞、鼻持ちならねぇ~”ってポランスキーは言いたかったのではないだろうか。
我々の日常でもよくオトナの対応が求められるシーンがある。
レストランで間違ったオーダーの料理が来てしまったとき、仕事上で”言った言わない”的な論議になったとき、車での軽い事故のときなどもそうかもしれない。
おそらくは、自分をヒステリックな低能で低層の人間に見られたくないときに加害者も被害者もそう装うのではないだろうか。
しかしそうすることで、解決までの時間が余計にかかったり、真意がわからないため心からの納得ができず、解決に至らないケースもあるのではないだろうか。
だったら最初から本音でこいよ!的なメッセージ。
とてもいいと思います。
しかも本作の場合は子供のけんかに大人が出てきているわけですから(まぁ、出てきてもおかしくないレベルですが)、
事実認識にも相当ややこしいバイアスがかかってきます。

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そのうえ、途中からは何の話してんの?って具合ですから。
このあたりの話に似ているのは、村上春樹『カンガルー日和』(だったかな~)という短編の1話に、
兄と妹がスパゲティーショップでスパゲティーに関して言い争いを始めるのだが、あくまでスパゲティーはきっかけであって、
言い争いをしたい本質は随分まえから起こっていた別の事。
いわゆる、代理戦争なのだ。みたいな話があってそれに似ているなぁ~、と。
なので、本作のクライマックスも罵り合っている最中はすでに”こども”のことは関係なし。
で、本作の魅力的な点がオープニングシーケンスとエンドシーケンスなのだ。
そこでの演出がと~っても”オトナ”だ。
ということで、僕はかなり好きな作品です。
そして、ケイト・ウィンスレットの出演作にハズレなし。

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